本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が今村善彰9段の対局です。布石は黒が外廻り、白が実利という進行でしたが、余8段は単純な模様を拡げていく手ではなく、左辺に打ち込んでいき、白がケイマしている所の切りをにらみながら、戦いに持ち込んで厚みを働かせようとしました。この過程で、左辺で左下隅にかかった黒の一段が攻められた時、白の下辺からのハネに対し単に延びると封鎖されますが、左辺の白にノゾキを打ってハネたのが好手で、はっきりこの一団が活きた上に左辺の白と下辺の白の連絡を絶ち、原形から考えると黒の大成功でした。更に黒は左上隅から延びる白と中央の白の分断を狙い、結果としてそれに成功しました。白は上辺左の黒の一段の連絡の不備を突いていく手を狙っていましたが、それを実行しない内に取られてしまったのは誤算でした。白は取られた上辺の石を捨て石にして締め付け、左辺から中央の白を厚くしましたが、黒の上辺の地は50目近くあり、黒の大きなリードとなりました。次に白が残された右辺に打ち込んでいった時、黒は手堅く打っていれば勝ちでしたが、右辺の白を厳しくせめて中央の黒の薄みをカバーし、左辺から中央の白の大石を取るという、一番厳しい道を選びました。しかし白からの上手い反撃の手をうっかりし、黒3子が取られて右辺と中央の白がつながって両方が安泰になりました。これは黒にとって最悪の結果でしたが、それでもそれまでのリードが大きく、しばらくヨセを打ち進めた後、白の投了となりました。