シャプトンの砥石「刃の黒幕」シリーズについての私なりのまとめ。
現時点の結論:
私の砥石の使い方からするとあまりメリットがなく、今後これ以上このシリーズを買い進めていくことはしない。ただ、単純にステンレス包丁を切れるようにしたいので砥石が一種類だけ欲しい、という人にはこのシリーズの#1000~#2000辺りがまあお勧めでしょう。
この会社については、実はわずか従業員20人の小さな会社です。(信用調査会社の情報によれば、資本金:2,200万円、売上:2億4千万円/年、社員:20人)しかしその割りには非常にマーケティングが巧妙と感じます。ホームページもなかなか良く出来て格好いいですが、私が別に購入した刃の黒幕シリーズ外のセラミック砥石1500番についてはまったく情報無く、困ったHPの見本でもありますが。
マーケティングがうまいというのは、先行する名前の通ったキング砥石とエビ印に対し、以下のような差別化を図っている点です。
(1)キングが手を出していないマグネシア系セラミック砥石に集中
(2)現状ほとんどの家庭がステンレス包丁しか持っておらず、それがキングの砥石より短い時間で研げることをアピール。
(3)なおかつマグネシア系の特徴として、長時間水に浸す必要もなく、すぐ研げるメリットを強調。
(4)同じデザインで色んな番のを揃えて統一感を出し、またそれぞれの番で色を変えて、研いで表面の文字が消えても番号がすぐ分かるようにした。
(5)「刃の黒幕」「空母」といったネーミングの面白さ。
(6)マグネシア系はビトリファイ系より単価が高いが、砥石の厚みを15mmに抑え、値段を安くした。(通常の砥石の厚みは25mm~30mm。)一般家庭で15mmでもそれが半分になるまで使う人はまずいないと思いますので、一般用としては確かに15mmで十分です。
反面、マグネシア系の欠点を含む様々な問題点がユーザーにきちんと伝えられていないとも感じます。
(私が買った2000番と320番には取扱説明書は無かったと思います。)
(1)30分以上水に漬けたままにしておくと、表面が軟化したりクラックが入ったりして砥石としては使えなくなる。
(2)経年変化で砥石自体の硬度が変化する。(おそらく吸湿により柔らかくなる。)→砥石としてはかなり大きな問題。
(3)付属プラスチックケースが安っぽく、また強度も十分でない。更にサイズもぴったりではなくガタがあり、砥石台としては良くない。また保存用としても湿気が中にこもりやすく良くない。
(4)HPのFAQに意味のよく分からないことが書いてある。「名倉砥石はついていますか?→名倉砥石をすることで砥面が荒れて凸凹になる為、名倉砥石は必要ございません。」→一般論として、名倉をかけて砥面が荒れて凸凹になることはなく、むしろその逆で微細な凸凹を直す機能がある筈。シャプトン砥石との相性でそのような現象が起こるのかどうか説明がきわめて不足している。
ちなみにマグネシア系の砥石は、ナニワ研磨工業は昭和35年から発売していますので、新しい技術でも何でもありません。(シャプトンの創業は1983年=昭和58年でそれよりずっと後。)世の中にはマグネシア系の耐湿性を改良する技術がいくつか出ていますが、シャプトンの砥石がそのようなものを採用しているという情報はありません。