小林信彦の「素晴らしい日本野球」をかなり久し振りに再読。最初の発売の時は「発語訓練」というタイトルでした。W.C.フラナガンという、日本通という設定の架空のアメリカ人が書いたものを翻訳したという、「素晴らしい日本野球」「素晴らしい日本文化」が含まれており、これは後に「ちはやふる奥の細道」につながります。「素晴らしい日本野球」がBrutusに載った時には、フラナガンが架空の人物だということが理解されないで、まともに受け取った批評が出たりしました。「素晴らしい日本文化」はその批評に応える形を取った続篇です。この頃の小林信彦は何かに取り憑かれたかのようにアイデアが噴出しており、「少女の復讐を大藪春彦風に書いたら」、「ハーレクインロマンスの主人公を老人にしたら」、「もしも日本がアメリカではなくソ連に占領されていたら」などの突飛な設定を元に喜劇的想像力を膨らませたのが、この本に入っている作品群です。「サモワール・メモワール」がソ連占領ものですが、この作品の元々のアイデアは、朝鮮戦争の頃、小林信彦が友人から「来年は日劇でコサックダンスを見ているのではないか」と言われたことに基づいているんではないかと思います。
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