白井喬二の「洪水図絵」を読了。昭和16年に出版されたもの。「洪水図絵」、「贋花」、「つばくろ槍」、「蛍扇」、「出世外伝」、「妬心の園」、「子とろ殺陣」、「火紋」を収録。このうち「妬心の園」は「沈鐘と佳人」にも収録されていたものです。ある経済的に行き詰まった武士が、妻があるのに独身と偽ってある裕福な家の養子になって、妻には三ヶ月以内に迎えに来ると言います。しかし、実際は別の女を嫁に取らされそうになります。必死に断っていたのですが、ふとしたすれ違いで妻が浮気をしていると勘違いし、かっとなって別の女と結婚してしまうという話です。
「洪水図絵」には戦前の白井には珍しくちょっとエロチックな描写があります。「そのくせ、死んだ先夫鴫野義介の愛撫の名残らしい性の技巧をも心得た」という表現が出てきます。
いずれの作品も白井らしくちょっとひねってあって楽しめる作品です。
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