BBCのニュース「搾取された移民労働者」

BBCが8月25日に、動画ニュースにて、日本の技能労働者の搾取の問題を取り上げました。
現在、BBCのサイトだけでなく、YouTubeにも上がっています。
そのニュースの日本語訳を作りました。一人でも多くの方にこの問題を知っていただきたいので、BBCの許可をもらっていませんが、ここで公開します。(BBCから取り下げて欲しいという依頼があれば取り下げますので、予告なく削除する場合があります。)

BBCニュース 2019年8月25日

Migrant workers ‘exploited’ in Japan
日本で「搾取」される移住労働者達
https://www.bbc.com/news/av/world-asia-49448757/migrant-workers-exploited-in-japan
https://www.youtube.com/watch?v=wPcaIL8PFJ4

これはよく知られた話です。
発展途上国から来た人々が、飽くことを知らないグローバル市場に向けた商品を量産しています。
でももしもそうした商品が日本で作られているとしたらどうでしょう?
そして政府の移民の枠組みにのっとった搾取が行われているという申し立てが露見したとしたら。

「6ヵ月の間、一日の休みもありませんでした。」
「工場の人達は、私が一人だけ工場に残っている時に、一人で機械を動かすように依頼しました。」
「私は本当にその機械の動かし方を知りませんでした。」
「私はもうここに住みたくありませんでした。」
「そして自分自身の暮らしを取り戻そうとしました。」

彼らは本当は実習生の筈でした。
日本に来て、お金を稼ぎ、技能を学ぶための。
でも実際は、彼らは「搾取された」と申し立てています。
日本政府の枠組みにのっとり、何千ものビジネスがその枠組みの中にあります。
その中には日本のもっとも良く知られたブランドもあります。
日本は移民が必要だと言っています。
でも本当にそうなのでしょうか?

こうした移民労働者が最後に行き着くのは、この町のような工場街です。
何故なら、そうした場所では日本の企業が必死になって作業員を求めているからです。

この地区に移住労働者のための救護施設があります。
その施設はベトナム、中国、カンボジアからの移住者を受入れてきています。
そして彼らがその雇用主との間で抱える訴訟事例について支援しています。

「最初にここに着いた後は、朝の6時半から深夜まで働きました。」
「6ヵ月の間、一日の休みもありませんでした。」
チャンさんは日本にお金を稼ぐために来ました。
息子さんに立派な結婚式を挙げさせてやるためです。
チャンさんは衣服を作る小さな会社で働きました。
そこで搾取されたと言っています。
「給与明細書はすべてデタラメです。」
チャンさんは私に一年間記録し続けたメモを見せてくれました。
それは実際の労働時間を記録したものでした。
チャンさんは残業代がまったく支払われなかったと言っています。
そして未払いの賃金が5万ドル(525万円)になると言っています。

「仕事は本当に疲れ果てるもので、足が腫れ上がり腰を痛めました。」
「いつも頭痛が続き、夜中に泣きたくなりそうでした。」
「でもそれを上長に言うのが恐かったのです。」
「何故なら私の体調が良くないのを上長が知ったら私を首にするだろうと思ったからです。」

我々は他の2人にも話を聞きました。どちらも中国から来ています。
その2人もこの会社の労働慣行について同様のことを申し立てました。

この会社はそうした申し立てを否定しました。
それによるとすべての従業員には最低賃金を支払っていると言っています。
また労働時間についてのものも含めて雇用に関する全ての法律を遵守していると言っています。

(画面のみ)
「当社の基本給は最低賃金に基づいて計算されています。

また残業代も支払っています。」

そして彼らが発行している給与明細は正確だと主張しています。
また従業員が会社の建物を出るのは自由だとも言いました。
そして一日の就業時間が始まった後でもスーパーマーケットに行くのも許可されていたと言いました。

「これがあなたが服に縫い付けていたタグですか?」
「この服はコムデギャルソンの製品です。こんなのを沢山見ましたか?」
「こういうタグが沢山あったと思います。」
「こちらはバーニーズ・ニューヨークで売っている製品です。」

私達はこうした申し立てをバーニーズ・ニューヨークとコムデギャルソンに伝えました。
どちらの会社もこの工場とは直接の取引は無いと言います。
そしてこの工場が使われているのは、彼らのサプライチェーンでのコントロールすることが出来ないアウトソーシング(外注)の結果だとしています。
(画面のみ)
コムデギャルソンは従業員の労働条件、健康と安全について厳格な条件を定めています。

コムデギャルソンは彼らは一緒に仕事をしている全ての工場の従業員の労働条件、健康と安全について、厳格な条件を定めていると強く主張しています。

この人(チャンさん)はコムデギャルソンがその存在を知らないし外注の同意もしていない下請け企業に雇われたのだと言います。
下請け企業はきちんとした手続きを取っており、こうしたことが2度と起きないことを保証しています、とコムデギャルソンは言っています。

バーニーズ・ニューヨークは、この会社に対し何も直接注文したことはないし、現在本件について調査中であると述べています。

日本には技能実習生を雇っている会社が6000あります。
2017年の報告では、日本政府はその内の70%の会社が違法残業や残業代未払いなどの規制違反を行っていたとしています。
それでは何故政府の枠組みがそのような制度の悪用という泥沼に陥ったのでしょうか?
過去何世紀にも渡って、日本は外国から自らを隔離し閉じこもってきました。
その結果日本は世界の中でもっとも均質性の高い社会となりました。
今その社会は(老齢化と人口減少という)人口動態的な時限爆弾を抱えています。
日本は今必死になって働き手を求めています。
そして技能実習制度は多くの会社にとって、安価な外国からの労働者を雇うための手段になっています。
しかし実習生の多くは日本語を話せません。
そして自分が持つ様々な労働者としての権利についてきちんと説明されている人はほとんどいません。
その結果制度の悪用の被害に遭いやすくなってしまっています。

そしてBBCはこの会社以外で働いていて、悲惨な経験をしている技能実習生にも話を聞きました。
「最初にここに来た時は、事前に想像していた通り、とてもいい所だと思いました。」
「ここは本当に清潔です。まったく。」
中国でフアンさんは日本語を勉強しました。
日本に来て日本語がもっと流暢になることを期待しており、箱(段ボール箱?)を製造している工場に職を得ました。
「私が下に付いた上長は私が「こんにちは」と挨拶しても何も返事をしませんでした。」
「仕事の指導もほとんどしてくれませんでした。」
「私は工場の機械に手を挟まれてしまいました。」
「工場のオーナーは私を中国に送り返そうとしました。」
フアンさんは(労災として)補償を得ようとしましたが、工場のオーナーは自分は破産を宣告したといって取り合いません。
そしてもしその訴えが認められた場合には、フアンさんの雇用とその労災事故自体が無かったことにされるのです。

「私達はトマトとキュウリを育てています。」
チェン・カイさんはフアンさんとチャンさんが滞在している救護施設を運営しています。
二人は救護施設ではあまりする事がないのです。
農作業は二人が他のメンバーと話をしたり付き合ったりするのの手助けになります。
「今それを動かしたらいけません。駄目になってしまいます。」
「これは上海白菜ですか?」
(画面)
シーさん、中国人技能実習生
「今ここでは他の人と冗談を言ったり笑ったりすることが出来ます。」
「でもすぐ次の瞬間後ろを向いて泣き出してしまいます。」
「私は以前はこんな人間ではありませんでした。」
「これは心療内科のお医者さんからもらった薬です。」

シーさんは職場でひどいイジメを受けました。
シーさんは外国人であるということだけでイジメの対象にされてしまったように感じました。
「私はその職場でただ一人の女性でした。」
「他の従業員はしばしば下品な冗談を言い合っていました。」
「私は冗談でボスのことを『馬鹿』と言いました。」
「グループリダーがその場にいて、彼は私に怒鳴り立てました。」
「そのグループリーダーはこう言いました。『お前は中国から来た日本での実習生なんだぞ。俺たちがお前の事を罵っている時はただ黙って聞いていればいいんだ。余計な返事をするな。』」
「昼食休憩の間中、私はただ空を見つめていました。」
「ここで暮らすと心底疲れ切ってしまう、と思いました。」
「もう生きていたくありませんでした。」
シーさんは3ヵ月病院に入院し、腰を痛めてしまいました。
もう働くことが出来ないかもしれません。
彼女は今、今回の事件を労災として認めてもらうよう戦っています。
「もし日本に来ていなかったらこんなことは起きていませんでした。」
「あの人達があんなにひどく私をいじめたりしなかったら、私は自殺を試みるようなことはしなかったでしょう。」

日本の法務省はその報告書の中で、5年間で技能実習生157人が死亡しており、その内17人が自殺によるものであるとしています。
技能実習生の支援活動をしている人は、実際の数字はもっと多いとしています。
これらの技能実習生は日本に来て世界を見てやろう、そして学んで将来のために蓄えを作ろうと夢見ていました。
しかしながら実際は彼らは安い労働力として使われただけでした。
今年日本は技能の低い移住者に対しその歴史の中で一度もなかったレベルにまで更に門戸を拡げるとしています。
そして今後5年間で34万5千人を受入れるとしています。
しかしそれらの人がやって来た時、日本は既に日本にいる技能実習生をどう取り扱うのかを考慮する必要があります。

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