原田豊太郎の「英文ライティング『冠詞』自由自在」を読了。正保富三の「英語の冠詞がわかる本」が得るところが少なかったため、さらに冠詞の使い方の理解を求めて買ったもの。筆者は1941年生まれで、東大の応物出身。技術英語の本をたくさん書いている人です。この本に書いてあることで、目から鱗だったのは、ネイティブが使ういわゆる英英辞典には、[U](不可算名詞)と[C](可算名詞)という記号はついてないよ、ということ。何故ならばほとんどの不可算名詞は、可算名詞になることもあるから。有名な例としては、自由=freedomは普通不可算名詞ですが、セオドア・ルーズヴェルト大統領は1941年に「四つの自由」を唱えました。((1) 表現の自由,(2) 信仰の自由,(3) 欠乏からの自由 ,(4) 恐怖からの自由 )これの英語はfour freedomsです。「英辞郎」に[U]と[C]が載っていないのは何故なんだろうと常々思っていましたが、疑問が氷解しました。
また、この筆者は、「a〔数えられる名詞〕が特定の一つの事物をさす」という、非常にパラドキシカルな場合があることを強調します。それは書き手が特定の事物を取り上げているという意識がないのに、特定性が生じることが特徴だと言っています。説明は長くなるので省略します。
この本は、正保本よりも実用的だと思います。ただ、こうした本では、結局規則とその例外を示すので、印象深いのはむしろ例外の方で、こうした本を読んだためにかえって実際の英文を書くときに悩んだり、誤ったする可能性が増えるのではないかと思います。結局規則で冠詞を理解しようとしても限界があって、語学というのはやはり慣れるしかないということを改めて思い知らされます。ただ、それでも諦めきれないので、この本の中で紹介されていた、デイビッド・セインの冠詞の本をさらにAmazonに注文しました。
拙著を購読、その上丁寧な書評を書いていただきありがとうございます。冠詞は事物の認識に直接関係があるため、難しい分野です。ホームページページを拝見しますと外国語に強い関心がおありのようです。冠詞の基本の用法を押さえたら、自分が興味のある分野の英文を、冠詞に注目しながら読むのが冠詞の用法を上達させる一つの方法と考えます。読んでいて納得できない用法を目にしたら面倒でも収集してゆけば、やがて用法が理解できるようになります。ご健闘を祈ります。蛇足になりますが、本書を書いた最大の動機は不定冠詞の”特定”の意味が事物の実在性から生じているという考えを活字の形で残しておきたかったからです。この考え方は、日本の冠詞の学者はまだ提唱していないようですし、おそらく外国の冠詞の学者も気づいていないのではと思っています。私の思い込みかもしれませんが。原田豊太郎
原田様、わざわざ筆者の方からコメントいただき有り難うございました。ご指摘通り、昔から外国語に関心があり、ドイツ語やったり韓国語やったり、ラテン・ギリシア語まで手を出したりしましたが、ともかく英語の冠詞が一番わからないです。会社で日本語の英訳を頼まれることが多いのですが、一番悩むのが冠詞です。
原田様の本を読んだ後、デイビッド・セインの本と、猪浦道夫の「英語冠詞大講座」も読みました。その中で、原田様の不定冠詞の特定の意味が事物の実在性から生じるという考えは非常にユニークで、かつ不定冠詞の理解にも非常に役に立つものだと思います。