白井喬二の「十両物語」を読了。昭和26年6月の「別冊 モダン日本」に掲載されたもの。この雑誌は見た限りほとんどカストリ雑誌。お話は、ある侍が質屋にある質草を持ち込むが、中を見ないで十両貸せ、と言います。中身は家伝の刀だそうですが、当主である自分は一生に一回しかこの刀を見てはいけない、と言います。またその家に関係ない者が見ると、刀が蛇になってしまうという言い伝えがある、と言います。それでも質屋は中身も見ないでお金を出せませんので、ともかく箱を開けて中を見ると、たちまち一匹の蛇が這い出て、床下に逃げていきます。侍は質屋が中を検めたから刀が蛇になったと言い張り、ついに十両をせしめます。侍は、そのお金で、ある生娘が吉原に売られようとしているのを、手付けで十両払って助けて、その代わりにうまいことをしようと企みます。しかしその企みは…という話で、中々捻りの利いた面白いお話でした。河出書房の白井喬二戦後作品集と同じ頃の作品ですが、何故これが漏れているのかがわかりません。
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