小林信彦の「大統領の密使」を再読。オヨヨ大統領シリーズで、初めての大人向けの作品で、ジュブナイルの「オヨヨ島の冒険」「怪人オヨヨ大統領」に続いて3番目に書かれたものです。内容はドタバタコメディでありながら、本格的なミステリーにもなっていて、ミステリーマニアの「SRの会」が1971年のベストミステリーに選んでいます。内容は、DJの今似見手郎(実在のアナウンサー今仁哲夫がモデル)がホテルのギデオン聖書を出来心で持ち帰った所、その聖書にはマイクロフィルムが隠されていてオヨヨ大統領の組織が登場して、という話です。丹下左膳の「こけ猿の壺」や映画の「マルタの鷹」のようなお宝争奪戦です。宍戸錠の「エースのジョー」と「あしたのジョー」をパロった「きのうのジョー」とか、日本テレビの有名プロデューサーの細野邦彦(「裏番組をぶっとばせ!」「ウィークエンダー」)と井原高忠(「ゲバゲバ90分」「11PM」)をモデルとする細井忠邦とか、007ことジェームズ・ボンドの遺児(いいのか?ジェームズ・ボンドは「007は2度死ぬ」の中で浜美枝が演じていた日本人の海女のキッシー鈴木との間に子供ができたことになっています)とか登場します。その他、今似DJのファンだという謎のキャラクターである「青木の奥さん」が神出鬼没に登場して狂言回しの役を演じます。オヨヨ大統領も、ジュブナイルでは単なるお笑いキャラ的でしたが、本作品でようやく悪役らしくなります。
他の特長としては、両国生まれの作者らしく、登場する場所が下町に集中しているのと、きのうのジョーが昭和20年代を回顧するのが興味深いです。
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