本日のNHK杯戦の囲碁は準々決勝の最終局で、黒番が結城聡9段、白番が張栩9段で、2人ともNHK杯戦優勝5回を誇る早碁の名手同士の興味深い対戦です。対局は左上隅でかかってきた黒を白が低く一間に挟んだのですが、その後古典的な定石形になりました。この定石は黒も白もお互いの石を取り合って治まって、その後の狙いに乏しいので最近のプロはあまり打たないようです。しかしその後の狙いが乏しいと言うのは間違いだということを後で張栩9段が見せてくれました。黒は下辺の白を攻めようとしました。これに対し、白は下辺をすぐ動かず、右辺から押しを打ちました。黒はこの押しに対してはね、白もはねた時、黒は切りました。ここで白は右辺を受けずに下辺を飛びました。黒は右辺を押さえて白の穴を継がせ、白がはねた石をシチョウに取りました。この別れは黒が一本取ったと思ったのですが、白は左上隅の黒に肩付きしました。これが巧妙なシチョウアタリで、黒は数手受けた後、結局シチョウを抜きました。白は左上隅の黒を封鎖し、左上隅に広大な厚みを築くことが出来ました。白は下辺の石が弱いですが、それほどきつく攻められることはありませんでした。白は右上隅に手をつけ、右辺に展開しました。黒はこの2つの弱石を絡みにしてうまく攻めて得を図りたいところでしたが、黒の攻めは今ひとつ中途半端でした。特に白の厚みに切りがあって、切っておくほうがなにかと効きがあってよかったと思うのですが、黒は上辺を開いて地に走り、白に中央を継がせてしまいました。白はその後下辺を巧みにしのぎ、右辺の石も中央の厚みに連絡して、どこにも心配な石がなくなり、後はヨセになりました。ヨセでは白が右下隅に手が生じるのをうっかりして多少損をしましたが、黒も損をして、結局地合いは盤面でいい勝負となり、黒が投了しました。これでベスト4が出揃いました。張栩9段、一力遼7段、伊田篤史8段、そして井山裕太棋聖です。来週は張栩9段と一力遼7段の対戦です。