本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が富士田明彦7段、白番が井山裕太大三冠(一力遼に天元位を奪取されて三冠に後退しましたが、それでも棋聖・名人・本因坊の大三冠です)の対戦です。布石では、左下隅で黒が白の星に対してダイレクト三々ではなく、下に付けたのがちょっと珍しいですが、これもAI流のようです。これに対し白がハネて黒が伸びた時に、普通は白は隅を下がりますが、白は押しを選択し中央を厚くしました。これに対して黒は下辺に地模様を張りましたが。白はすかさず入って行きました。ここでの折衝の結果、黒は右下隅に好形で大きな地を確保しました。これに対して白は下辺の黒地を消して中央に進出し、また左下隅から延びる黒を場合によっては狙うという展開になりました。その後白が右上隅にかかっていって、白は上辺方面、黒は右辺方面にそれぞれ模様を築きました。そこで白は自分の模様を拡げたり芯を入れるのではなく、右辺に打ち込んで行きました。そして黒に強い右下隅の方から詰めさせた後、開いてまた黒が受けた後に、その2子を逃げるのではなく、白模様を拡げる手を打ちました。黒は当然その間を割って行き、後一手打てば右上隅、右辺、左下隅で60目近い時を確保という時点で、黒は左上隅の白に付けて行きました。そして更に黒は白模様に入って行きました。しかし、この黒は下方の白が厚いため、活きるのが大変で、結局は右辺や下辺と連絡出来ましたが、結果として左上隅に付けた石は味良く取られ、さらに中央左の黒2子も取られ、また右辺の白は問題無く生還しました。この時点では白が大きくリードしていました。しかし、この後白は見落としていた強手を黒が打ち、中央の白のダメヅマリを利用して、中央左で取られていた黒2子を動き出し、同時に中央下方の白を切り離していじめる事が出来、更には左上隅もかなり白の時を減らすことが出来たという大戦果を挙げました。これで細かい碁になり黒の大逆転か?という場面もありましたが、黒がヨセで2目損をして、それ以降逆転の余地が無いと言うことで、黒の投了となりました。白の井山裕太大三冠の打ち回しが見事でしたが、黒の富士田明彦7段も見事な読みで形勢をほぼ互角近くにまで戻したのはさすがでした。