塩野七生の「ギリシア人の物語 [3] 都市国家ギリシアの終焉」を読了。この巻は正直な所、読むのが辛い、悲しい展開でした。アテネは長期に渡ったペロポネソス戦争を結局ペルシアの資金を使ったスパルタによって敗れ、常時200隻のガレー船を誇った最強の海軍はわずか20隻のみを許され、エーゲ海一帯への制海力に支えられた経済的な優位も、そして都市中心部と外港を結ぶ外壁もほぼ破壊され、完全に凋落します。しかし、勝ったスパルタの方もアテネに代わってギリシア全土に覇を唱え都市国家群を支配するということが出来ず、その内台頭してきたテーベに伝統の重装歩兵の軍が打ち破られてしまいます。しかしそのテーベも弱小ポリスであり優れた指導者二人が死ぬとあっという間に衰え、そこに台頭してきたマケドニアのフィリッポスに敗れ、かつては後進地域として馬鹿にされてきたマケドニアが今やギリシアの盟主となります。という流れですが、いわゆる有名なソクラテスへの死刑判決がこの時期だったのは理解していませんでした。要するにアテネの凋落への不満に対するスケープゴートが必要だったのだろうな、と思いました。かつてドイツの第2次世界大戦の敗北がヒトラーによって引き起こされたのは、マックス・ヴェーバーがワイマール共和国の成立時に人民による選挙の大統領制を主張したからだ、というきわめておかしな批判がモムゼンという人によって行われましたが、スケープゴート探しという意味で同じだな、と思いました。(念のため、ヴェーバーは1920年に死んでいますので、ナチスの台頭とは何の関係もありません。)
次の巻はいよいよアレキサンダー大王の登場です。塩野七生の最後の著作になります。