ジェイコブ・ソールの「帳簿の世界史」を読了。筆者は会計学と歴史学の専門家で、この本は「複式簿記」と国の繁栄をセットにして書いた歴史書です。しかし歴史書としては質が低く所々間違ったことが書いてあります。というか主題は「複式簿記をきちんと採用した国は栄え、そうでない国は駄目になった」ということの繰り返しです。私見では複式簿記というかお金の管理はもちろん必要なことでしょうが、それが十分条件では無い訳で、いくら帳簿をきちんと付けていても、歳出が歳入より大幅に多ければその国はいつかは破綻します。というか大体戦争とインフレでチャラになるんですけど。それとこの本で良く分る別のことは、複式簿記は常に複複簿記というか二重複式簿記になりやすい、平たく言えば常に表帳簿と裏帳簿が使われてきたということで、複雑で元帳とか仕訳帳が多数あるので、ごまかしやすいというか、簿記の歴史は粉飾の歴史でもあります。今会社で内部統制の手伝いをやっていますが、こんなのがうるさく言われるようになったのも、最近の粉飾決算によるスキャンダルが原因です。これについては今後も無くなることが無いどころか、フィンテクとかのIT技術の進歩で財務情報がますますブラックボックス化し、もっと状況が悪くなるような気がします。ある生成AIが粉飾決算情報を作り出し、別の生成AIがそれを暴こうとする、といった世界がもうすぐ来そうだと思います。まあまとめて、暇つぶしにはなりますが、学術的な本ではないです。