中里介山の「大菩薩峠」第11巻を読了しました。この巻では宇津木兵馬がついに(というかほとんど偶然ですが)白骨温泉の机龍之助が泊まっている宿にたどり着き、果たして敵討ちは如何に!という期待を読者にもたらすのですが、中里介山はここで見事に読者の期待をスカしてしまいます。宇津木兵馬は同じ宿にいる龍之助をそれと知ることがなく、あっさりとそのまま引き上げてしまいます。普通大衆小説ならここで敵討ちのチャンバラとなってそろそろこの長いお話も収束に向かう所ですが、中里介山は「君の名は」(新海監督のアニメの方じゃ無くて、菊田一夫原作のラジオドラマの方)の手法を使うかのように、龍之助と兵馬をなかなか対決させずに引っ張ります。果たして第20巻までに敵討ちが行われるのでしょうか。(どうも行われないような予感がしています。)
一方で道庵先生と宇治山田の米友は尾張にやってきて、どういうコネなのか二人は名古屋城の天守閣にまで登りますが、米友が道庵先生からあれが伊勢の山だと聞かされて米友が望郷の念からおかしくなります。その後、米友は亡きお君とコンビを組んでいた「お杉」ことよっちゃんと再会し涙に暮れます。