豊田有恒の「『宇宙戦艦ヤマト』の真実 ---いかに誕生し、進化したか」を読了。豊田が「宇宙戦艦ヤマト」についてある大新聞からインタビューを受けたけど、その大新聞が内容をねじ曲げ、無理矢理に「ヤマトではガミラスに敗北寸前の地球が太平洋戦争での日本の姿に重ねられている」という勝手な解釈で記事を書かれたことに憤激して、「宇宙戦艦ヤマト」の誕生の背景を当時者として改めて語っているものです。(その大新聞の名前は書いてありませんが、誰が読んでも朝日新聞だろうと推測がつきます。)個人的には、前半の日本のアニメの創生期の話が興味深くて、エイトマンが生まれる背景などが楽しく読めました。「ヤマト」については、西崎義展との関わりが必然的に多くなります。豊田は西崎がいなかったらヤマトは出来ていなかったとその功績を認めながら、しかし西崎にはクリエイターとしての才能はなく、その一方で多くのクリエイターをただみたいな安いお金でこき使ったとして強く非難しています。なんと松本零士にさえ、ろくなお金を払っていなかったようです。これは西崎一人の罪というより、日本で多く見られる「知的作業にお金を払わない」という悪しき慣習と深くつながっていると思います。豊田によれば、作品が一律に「コンテンツ」と呼ばれるようになってから、この傾向がさらにひどくなったとしています。
豊田のヤマトの最初の設定で面白いのは、イスカンダルにコスモクリーナーを取りに行くというのの元ネタは何と西遊記だということです。さすがにそれは気がついていませんでした。(西遊記をベースにしたアニメには、同じく松本零士原作の「SF西遊記スタージンガー」があります。)また、初期の設定はかなりダークでハードなもので、その設定が2010年のキムタク主演の実写版で一部使われていました。