池井戸潤の最新作「陸王」を読了。埼玉県行田市にある創業100年の足袋メーカーこはぜ屋が、新規事業として足袋を応用したスポーツシューズの開発に着手し…とくれば、最近の池井戸潤得意の「下町ロケット」パターンです。ですが、新作としてそれなりにはワンパターンを逃れる工夫はしてあって、一つは茂木という怪我をしてどん底に落ちた長距離ランナーが復活する話をからめたことです。二つ目は、この手の池井戸作品のパターンとして、こはぜ屋には次から次に危機が訪れますが、最後に訪れた最大の危機を脱するためにこはぜ屋が採った手段がちょっと今までのパターンにはなく新しいと思います。三つ目は社長の息子の大地が、就職面接にことごとく失敗して、仕方なくいやいやこはぜ屋で仕事をしていたのが、新製品の開発に関わる内に成長していく、ビルドゥングスロマンとしての一面です。全体的に傑作とは思いませんが、まあまあ楽しめる作品でした。少なくとも今読売新聞に連載している「花咲舞が黙ってない」よりはずっとまし。