松屋大好の「無双航路」を読みました。最近、マックス・ヴェーバーの難解な本を続けて読んでいたので、ちょっと気分転換です。この本はFacebookの広告で出てきて、ぱっと見面白そうだったので買ってみました。この先ネタバレがあるので、これから読む人は以下は見ない方がいいと思います。
お話としては、ある高校生が突然遠い未来の別の宇宙の、何故か巡洋宇宙戦艦のAIプログラムとして転生し、それもその巡洋宇宙戦艦が所属する軍勢が大敗勢の状態にあるのを、人間ならではの工夫で敵艦を振り切って待避するのに活躍する、という話です。宇宙戦艦だったら、こちらは元祖宇宙戦艦ヤマト世代ですから今さらですが、そこにAIがからむのが今風です。先日たまたまAIとシンギュラリティーについて調べていて、Wikipediaにシンギュラリティーを唱える人への批判として、そういう人達がAIを神と同一視していて、シンギュラリティーをキリストの再臨と重ねている、というのがありました。このお話も最後まで読むとほとんどそれに近い話になります。というのは、我々が住んでいるこの宇宙が、ある別の宇宙のAIプログラムが作ったシミュレーションに過ぎなくて、またそのAIが動いている宇宙もまたより上位の宇宙にあるAIのシミュレーションに過ぎない、という設定です。世界が誰かのシミュレーションであるというのは昔から良くある設定ですし、藤子不二雄Fの漫画にもそんなのがあったと思います。でもそれを多重階層化したのはちょっと新しいかなと思います。手塚治虫の火の鳥にもそういう多重化宇宙は出てきたと思いますが。
まあ作りはラノベでジュブナイルという感じではありますが、それなりに楽しんで読めた作品でした。