読売新聞社の「第十期棋聖決定七番勝負 激闘譜」を読了。趙治勲棋聖(当時)対小林光一名人(当時)の対決。実はこの対戦が始まる直前の1986年1月6日に、趙治勲棋聖は「助かったのが奇跡」と呼ばれる程の交通事故に遭い、両足と左腕を骨折します。この時の棋聖戦の第1局は1月16日からで、事故に遭ってわずか10日しか経っていません。対局に出られないと、不戦敗になります。しかし不屈の闘志で趙治勲棋聖は対局に出、この時は小林光一名人の好意もあって椅子対局になりましたが、負けはしたものの車椅子で2日の碁を打ちきりました。それどころか、続く第2、第3局は趙棋聖が連勝しました。特に第2局は見事な碁でした。相手の小林光一名人は、対戦相手を怪我人だと思っていては勝てないと悟り、この後奮起して3連勝し、棋聖位を奪取します。これによって趙治勲さんは無冠に転落し、逆に小林光一さんはこの後棋聖位を8期連続で獲得し、名誉棋聖の資格を得ると共に、秀行さんの連覇記録も抜きます。しかし、趙治勲さんも、一旦無冠には転落しましたが、8月に碁聖位を奪取、翌年には天元を取り、さらに1989年には武宮正樹9段から本因坊位を奪取し、3大タイトルに復帰します。この後、棋聖と名人を併せ持った小林光一さんが、大三冠を目指して、趙治勲さんの持つ本因坊位に連続3回挑戦して、趙治勲さんに阻まれたのは既に記しました。