大佛次郎の「照る日くもる日」を読了。この小説は、サバティーニの「スカーラムッシュ」の翻案と言われていたのでそれを確かめるのが主目的の読書でした。結論としては似ているのは一番大きなプロットが一つだけで、この程度で「翻案」とか言うのは作者に失礼です。白井喬二の「珊瑚重太郎」が「ゼンダ城の虜」のパクリだとか言うのも同じレベルです。大体このレベルの小説のアイデアに著作権はありませんから。菊池寛がこの小説について「大衆小説の全ての要素が入っている」と誉めたそうですが、それは逆に誉めすぎかと。でもまあまあ面白く読めました。一番大きなプロットは最初から知っているので、ああこの男がこの男の…と簡単に想像が付きますが、それが分ったらからと言って興が殺がれることはありませんでした。主人公に二人の女性が絡み、その一人が盗賊団の一員というのは、ちょっと「雪之丞変化」を思い出させました。この小説は最初新聞小説であり、電車で通勤しながら少しずつ読んだのは丁度ぴったりした読み方だったように思います。