白井喬二の「豹麿あばれ暦」(2)

国会図書館で、白井喬二の「豹麿あばれ暦」の連載第2回~4回の分を読むことができました。連載第4回までで中断した作品なので、これで全部です。豹麿は父親から万能人間になることを期待して修行の旅に出され、8年の修行をして61の師匠について、江戸に戻って来たのですが、父親と顔を合わせても、修行の過程で自分には敵が多数出来、それらを倒すまでは家に戻れないと言います。しかし父親はそこに何か嘘を感じます。一方、豹麿の姉で絶世の美女の登世は、堂本秋之介という武士と不義の仲に成り、お手討ちにされる所を将軍の恩赦で救われます。この姉の相手の堂本秋之介が逃げるために顔を変えるのを、それとは知らず豹麿が手伝います。また、お弓という豹麿の知り合いが子供を身籠もったのを、豹麿がこれまた堕胎を行います。この辺り、豹麿の身につけた技術の幅の広さが伺えます。その中には善だけでなく、悪に通じるような技術も含まれているようです。白井喬二は同じ万能児ものの「陽出づる艸紙(つるぎ無双)」の主人公綴井萬貴太について、作品の最後で「決して幸福な生活は送らなかった」としています。人間が万能の技を身につけても、決してそれがそのまま生きて幸福になることはないのだ、という白井の人生観が出ています。

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