白井喬二の「瑞穂太平記」(上古篇、大化篇)を読了。全五巻のうちの第一巻です。昭和15年から四社連盟の新聞四誌(「福岡日日」、「新愛知」、「北海タイムス」、「河北新報」)に連載されたものです。白井喬二版の日本史ですが、戦前の小説ですからベースとなっている史観は当然戦前のもので、いわゆる皇国史観です。上古篇は、宇部家と物集(もずめ)家が代々対立するのを描くという、「富士に立つ影」にちょっと似た構成です。出てくる時代は、大国主命の国譲り、神武東征、神功皇后の三韓征伐などです。「大化篇」は聖徳太子の話と、タイトル通り「大化の改新」の話です。しかし正直な所、白井喬二の本骨頂は白井流の虚構の歴史であって、実際の歴史に即したお話しは想像力の飛躍が感じられなくて今一つのように思います。戦後復刻されていませんが(学芸書林の全集の第二期には入る筈でした)、無理もないと思います。
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