白井喬二の「天晴れ啞将軍」を読了。昭和6年に講談社の雑誌キングに半年連載されたもの。キングの読者賞を得たぐらい好評の作品でした。しかしながら、一部の原稿が紛失したために、長らく単行本化されることがなく、1970年になって原稿が発見され、立風書房から初めて単行本化されたという曰く付きの作品です。冒頭から読者をぐいぐいと話に引き込む展開で、ある藩の兵糧倉の「蘇楽園」に、ある日若くてきれいな女性が息も絶え絶えに飛び込んできます。その女性は3日も何も食べておらず疲れ果てていたため、応対した鳩木石楠之助(しゃくのすけ)は、父の甚八が研究していた新しい糧食の試作品と思われるものをその女性に与えます。しかし、それはその藩の啞の若殿様の啞を治そうと甚八が必死に調合した薬でした。それは健康な者には逆に作用し、その女性を啞にしてしまいました。その女性は何か急な用があってやってきたのですが、啞になってしまったため、それを伝えることができなくなりました。といった感じで始まり、後はその藩の悪者の家老が若殿様を陥れようとするのを、甚八と石楠之助の親子がそれに対抗していこうとする話です。白井の作品の中でもかなり上位に入る、面白い作品だと思います。
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