伊藤大輔監督の「王将」を観ました。「富士に立つ影」のDVDが単独では手に入らず、「阪東妻三郎傑作選」みたいな10枚組で求めたのでその中に入っていたものです。いわゆる将棋指しの坂田三吉のお話です。1948年の撮影で阪妻の戦後の主演作品ですが、阪妻の芸域の広さにちょっと感動します。ただ、お話は原作の北條秀司によるかなりな脚色が入っており、事実とはかなり異なっているそうです。ただ子供のような無垢な性格、という所は間違いないようです。なお大映からは「将棋が映画になるか」と反対され、伊藤監督が執念で仕上げたもので、ワンシーンワンシーンよく考えて撮ってあって、特に最後の小春の危篤の際に、東京に関根名人の就位祝いに来ていた坂田三吉が電話でお題目(南無妙法蓮華経)を唱え、それを聞いた小春がお守りであった王将の駒を握りしめながら微笑みながら死んでいくシーンは、感動的です。なお知りませんでしたが、「ガラスの仮面」の主人公の北条マヤは、坂田三吉がモデル(一芸に秀でているが、他のことは何も出来ない人として)なんだそうです。なお、坂田三吉自身は「贈名人・王将」ですが、坂田の曾孫弟子の谷川浩二が実力制の名人(十七世)となり、坂田の夢を果たしています。