小波秀雄という方がIPAについてかなりとんでもないことを書いていますね。
一応私もこのブログで市販IPAをエタノールの代りの消毒剤に使うということを紹介しており、その責任も兼ねてきちんと書いておきます。
Amazon等で売っているIPAは基本的に工業用(インクなどの溶媒、機械部品などの油落とし、機器の洗浄)です。
それを「消毒」という用途を追加して販売している業者が紹介されていますが、それはそもそも違法行為です。大体販売している業者は単なる販売店であって製造メーカーではないケースがほとんどだと思います。そんな所に問い合わせて他に混ぜ物をしていなければOK、なんてあり得ないと思います。
後実験で使う試薬(当然純度が求められる)と工業用に大量に売られているIPAが同じ品質である保証なんてどこにも無いし、メーカーももちろんそんな保証はしていません。
つまり工業用のIPAを消毒に使うのはあくまで自己責任で場合によっては危険を伴うものであり、それ故私はIPA70%液は器物の消毒にしか使っていません。(手の消毒はポビドンヨードのハンドウオッシュでやっています。)工業用IPAを手指になんかとても怖くて使えません。(そもそもIPAはエタノールに比べ脱脂効果も刺激もはるかに強く、この意味でも手指消毒用には向いていません。大体通常のアルコールジェルなどにはわざわざグリセリンが加えてあって手の荒れを和らげるようにしているのに、それより脱脂効果が強いIPAをそれ自体で手指に使うなんて信じられません。)
日本薬局方で認定されて、病院で使われるIPAは当然のことながらメーカーの製造ラインを含めて厳しい基準があります。
https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/2714
にメーカーである三協化学の人の説明があります。
私も化学メーカーに10年いたので「工業用」の化学品のイメージは持っています。要するに馬鹿でかい反応釜で大量に作る訳です。もちろんそれなりの清掃とかはやるでしょうが、医療用のような厳密のものではもちろんありません。それでも(仮に何か不純物が入っていても)溶媒とか洗浄用で使うなら問題無いでしょ、と売っているのが工業用です。
(以下小波氏のHPへのリンクと引用)
(引用開始)
「消毒用」となってないものは使えないか?
今売られている汎用の溶剤は,メーカーで製造されている有機溶媒を小売業者が容器に小分けして,ラベルをつけて販売しているものです。実験で使われる試薬は,「特級」とか「一級」とあるのですが,大手試薬会社の営業の方に聞いたところ,昔は確かに特級といったら一級よりも精製の過程を入れていたのだけれど,今は技術が高いので最初から特級の品質のものができてしまうので,中身はちがいませんよと言われました。もう20年余り前の話です。
今回用いた製品については,通販サイトの情報に「消毒用」とあったものを買いましたが,缶にはその記載がなく,納品書に加筆されたような感じになっています。おそらく,消毒用の需要が発生しているので追加したのでしょう。業者に確認して他に混ぜ物をしていないとなったら,問題なく使えるはずです。とはいえ一般に溶剤で売られているものは中身が多すぎて持て余す可能性がありますが。
(引用終了)