トーマス・マンの「ブッデンブローク家の人々」(下)を読了。予想通りブッデンブローク家は次第に没落していき、当主トーマスは年齢を重ねるに連れ、次第に厭世的になり、やがてショーペンハウアーの厭世哲学に救いを見いだします。しかし、歯の治療の失敗が原因で、濡れた路上で転倒して頭を強打し、まだ50歳にもならない年齢で命を落とします。後を継ぐべきハンノはまだ若く、かつ芸術家気質で、結局ブッデンブローク商会は100年の歴史の後で解散となります。愛すべきトーニは、これらすべての一家の没落を最後まで見守るという役を演じます。最後の希望だったハンノも、物語の最後で突然…という終わり方をしていてある意味救いようのない結末ですが、不思議と陰惨な感じはしません。それはブッデンブローク家というある一家だけの滅亡というより、産業革命や宗教改革で生まれた市民層そのものが没落していく話だからかもしれません。トーマス・マンの年譜が最後についていますが、意外だったのがマンがいわゆるインテリではなく、ギムナジウム出身ではないことです。この小説中のハンノと同じく、マンも学校とはきわめて相性が悪かったようです。北杜夫がマンの小説の中で、何故これを最高傑作としているのかが、今回読んでみてももう一つ判然としませんでした。