白井喬二の「神変呉越草紙、柘榴一角」を読了。
「神変呉越草紙」は、白井喬二の初めての長編小説です。前に紹介した「怪建築十二段返し」などの短編小説が今一つだったのに対し、この「神変呉越草紙」は実に面白い傑作です。お話は、蝦蟇毛仙人から、それを手にする者は最高の栄耀栄華を得ることが出来るというお宝の話を聞いた若者が、それを求めて秩父の山中を駆け巡ります。お宝の手がかりの地図は二つに分かれていて、若者が持っているのは片方だけです。このお宝の手がかりの地図を巡っての争奪戦がハラハラドキドキです。色々あって、若者はついにお宝を手にするのですが、そこからの展開がまたちょっと意表を突きます。
「柘榴一角(ざくろいっかく)」は幕府の隠密であった父親の仕事を継いだ柘榴一角が大活躍する話です。この一角の性格が「富士に立つ影」の熊木公太郎と同じで真っ正直で明朗闊達です。公太郎もそれなりの剣の達人でしたが、一角は23歳にして武道の大名人で、「100人までなら任せておけ」、「1000人までなら大丈夫」とどんどん強さがエスカレートしていきます。とにかくこの強さがとても魅力的です。最後は父親が探り続けて来た贋金作りの陰謀を見事暴いて大団円です。
なお、この書籍の表紙絵を描いているのは山藤章二、そしてカラーの挿絵を描いているのは、あの小島剛夕(「子連れ狼」、「ケイの凄春」、「乾いて候」の)です。
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