塩野七生の「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以後」を読了。元老院最終勧告という、体制側の伝家の宝刀を抜かれて、カエサルはついにルビコン川を越えてローマに攻め入ります。しかし、カエサルが再三批判したように、元老院最終勧告というのは法治国家ローマではあってはならない制度であって、実際にこの制度でグラックス兄弟が殺されてしまっています。そしてローマを制したカエサルは次にポンペイウスとの最終対決に臨みます。カエサルは何度か敗戦を経験していますが、ポンペイウスはいわば常勝将軍で、そこの差が最後に出たのか、ポンペイウスは大敗して結局エジプトで殺され、世はカエサルのものになります。カエサルはスッラと違って寛容の精神で、ポンペイウス派を粛清したりせず、またポンペイウスの元に走ったキケロも許します。しかし結局この寛容の精神が仇になって、17人の共和政派によって刺し殺されます。その後、カエサルの遺書で後継者に指名されたオクタヴィアヌスとカエサルの軍事面での片腕だったアントニウスが権力を争いますが、クレオパトラとの愛に溺れたアントニウスが運命に見放されて破れ、ついにオクタヴィアヌスが帝政を始める一歩手前までです。
先日トランプ前大統領が、2ヵ月間で2度目の銃撃を受けましたが、2000年の時が経っても、未だに暴力で政敵を取り除こうとする短絡した考え方が払拭されていないことには、人類は果たして本当に進歩したのかと思います。