池井戸潤の「アキラとあきら」

池井戸潤の「アキラとあきら」を読了。未読作品ですが新作ではなく、2006年から2009年にかけて問題小説に連載されたけど、単行本にならず眠っていた物です。WOWWOWでTVドラマ化されることが決まって、新たに書き直して文庫本として出版されたものです。
最初の方は「アキラ」と「あきら」の二人の少年時代を描いて、それなりに面白いですが、途中からは池井戸潤お得意の「銀行融資もの」になります。ああまたか、という感じもしますが、この作品はしかしながら「銀行融資もの」の中でもかなり上位に置くことが出来る作品だと思います。その中でも「アキラ」と「あきら」が二人とも同じ銀行に入社し、その新人研修で伝説的な勝負を繰り広げる所が出色です。また階堂彬の方が父親の死後、弟が会社を継いだけどうまく行かず父親の会社に戻ったけど、そこで大きな危機に見舞われて、銀行に残った山崎瑛と力を合わせて解決策を必死に考え出す過程もなかなか読ませます。なお、階堂彬の弟が社長業に行き詰まりそのストレスで統合失調症になる、というのが出てきます。池井戸潤の作品で統合失調症が出てくるのはこれで4作目くらいになるのではないかと思います。おそらく身内に患者がいたのではないかと思います。またこの作品は結局「理想の銀行マン」を描いたものですが、池井戸潤が三菱銀行に在籍していた10年くらいの間に、モデルに成るような近い銀行マンが実在したのか、逆にまったく理想からはほど遠い銀行マンばかりが多かったので、理想を求めてこういう作品を書いたのか、そこの所は作者に聞いてみないとわかりません。

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