白井喬二の「葉月の殺陣」を読了。1929年(昭和4年)9月に講談倶楽部に掲載されたもの。これも平凡社の白井喬二全集の第5巻に収録されたもので読みました。お話は由井正雪の反乱の残党である天間昌五之介が主人公です。昌五之介が江戸を逃れて赤穂あたりをうろついている時に、後ろから呼びかける者がいます。最初は自分の事では無いだろうと思っていた昌五之介ですが、「天○先生」と呼びかけるのを聴いて、やっぱり自分だと思います。しかしそれは「天堂先生」で天間ではありませんでした。しかし、昌五之介は結局その「天堂先生」になりすまし、依頼された敵討ちの助太刀に参加することを承諾します。参加したのはいいのですが、どちらが味方でどちらが敵かも判別できず、敵味方構わず斬りまくり、結局双方から恨みを受けることになり、昌五之介は逐電します。宇野から高松に渡ろうとして船に乗り込みますが、その船の中で、昌五之介は自分では無いだれかが自分と間違えられて敵討ちの時のどさくさの恨みで討たれそうになっていると噂話で聴きます。その時船を海賊が襲います。昌五之介はその海賊の船に乗り込んで宇野に戻り、その勘違いされた人間を見ようとします。その人間はあっさりと斬り殺されてしまいますが、その後昌五之介は最初に自分が間違えられた「浮田天堂」の家を見つけます。そこを覗いてやろうと一手御指南を申し込みます。しかし名前を聞かれてうっかり本名を名乗ってしまいます。天堂との立ち会いの後、天堂は昌五之介が由井正雪の残党であると叫び、結局天堂の門人達との斬り合いになり、最後は捕り方もやってきて、昌五之介は斬り殺されるという話です。人の取り違えが二度起きる訳ですが、最後は本名をばらしてしまって殺されるというだけの話で、今一つの出来の作品と思います。
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